「どんなときにも、すべての子どもたちに、
育ち・学び・暮らすことを保障するために、
子どもの貧困対策法(仮称)制定を」

「なくそう! 子どもの貧困」6.19シンポジウム
「震災と子どもの貧困を考える――子どもの貧困対策法(仮)に向けて」
アピール文

【東日本大震災による子どもの貧困解決への新たな課題】

2011年3月11日、未曽有の被害をもたらす大震災が発生しました。
東日本大震災は、地震・津波に加え原発事故という非常事態を巻き起こし、
子ども・子育て家庭にも甚大な影響をもたらし、子どもの貧困解決にとって、
緊急で新しい課題をもたらしています。
貧困という観点に即してみると、大震災は私たちに次のことを提示しています。

1)現代社会においては、誰もが貧困にさらされるリスクと隣合わせで生きてい
る。
=貧困とは、「どこかの」「誰かの」問題ではなく、「私たち」の問題で
ある。
2)震災は貧困に直結する。
=震災は、被災地において深刻な貧困問題を発生させるうえに、非被災地
においても地域経済の停滞や雇用の悪化等による貧困問題の広域化と
深刻化をもたらす。
3)震災以前の政策の充実度が被害の最小化に寄与する。
=セーフティネットを整備し、貧困を予防/解決する政策を講じている
のか、貧困を放置する政策であるのかによって、被害の発生状況と
それへの対処は格段の違いがもたらされる。

【子どもの貧困と震災被害をつなぐ視点】
このように、貧困問題の解決への取り組みと、被災者・被災地支援/復興は、
子どもの貧困解決にとって、どちらもこれからの最重要課題であり、2つの課題を
つなぐ視点をもつことが重要であるといえるでしょう。そして、特に次の点につい
て、留意する必要があります。

1)時間の経過とともに、被災者・被災地のなかでも、より困難な子ども・家庭の存
在やその社会的孤立の問題が明らかになりつつあること。

2)災害という非常時において、充実した給食の実施、保育料や学費負担の軽減、
通園・通学手段や費用の保障、適切な援助者の配置、地域とのつながりといった
子どもたちのための日常のセーフティネットの重要性が浮き彫りになってきてい
ること。

3)震災復興に関心が集まるなかで、子どもの貧困という従来からの社会的課題を
後まわしにする傾向が生まれていること。

『子どもの貧困解決と震災復興のための総合的継続的な政策実現のために、
政府及び地方自治体に次のことを求めます』

◆どんなときにも、すべての子どもたちに、育ち、学び、暮らすことを保障できる
よう、子どもの貧困解決にむけた政策の継続的な実施を進めること。

◆震災復興計画のなかに、「子ども/子育て家庭」に焦点化した総合的な計画
づくりを進め、省庁横断的な組織を整えて、迅速な支援を進めること。

◇子どもの貧困解決に向けた歩みをより確かなものにするため、広範な国民的議論
を踏まえつつ、子どもの貧困対策法(仮称)を制定すること。

『2011年の夏休み期間に子どもの安全・健康のための緊急で特別な支援を
進めましょう』

「給食のない夏休み、体重の減る子がいる」――これは、従来から子どもの現場に
関わる人々が実感してきたことです。家庭で過ごす時間が増える夏休みには、それ
ぞれの家庭での子どもたちへのケアに格差が生じ、困難を抱える家庭の子どもたち
のリスクが高まることが、今年は例年以上に懸念されます。夏休みを目前に、次の
ことを行政、市民が連携して取り組んでいきましょう。

1)安全な水と食材の確保、十分な栄養補給。特に学校給食のない期間、
昼間保護者が不在になる家庭等での食事の確保。
2)衛生的で適温で過ごせる住環境の保障。
3)子どもが安心して過ごせる居場所づくりと見守り。
4)遊びや学習の保障と支援。

2011年6月19日
「なくそう! 子どもの貧困」全国ネットワーク

共同代表:湯澤直美・平湯真人・山野良一・三輪ほう子

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