【開催報告】2025年11月9日(日)子どもの貧困対策実践交流会2025を開催いたしました

「なくそう!子どもの貧困」全国ネットワークは、
2025年11月9日(日)、子どもの貧困対策実践交流会2025
子どもの貧困対策・居場所づくり これまでとこれから
(主催:「なくそう!子どもの貧困」全国ネットワーク 助成:公益財団法人 キリン福祉財団)
を会場(エッサム神田1号館3階301大会議室)およびオンラインで開催いたしました。

当日は子どもの居場所づくりを実践されているお三方にご報告をいただき、
オンラインで約100名、会場対面で約20名の方にご参加をいただきました。
実践交流会の終了後には、登壇者、世話人、会場参加の皆さんで交流タイムを設け、
会の感想やご自身の活動について意見交換を行いました。

ご登壇頂いた近藤さん、菅原さん、幸重さん、また会場およびオンラインでご参加いただいた皆様に改めてお礼申し上げます。

<報告内容>

●近藤愽子さん/気まぐれ八百屋だんだん店主/東京

子どもがひとりでも安心してごはんを食べられる居場所を
「自己責任」とせず、政治・行政は食と教育・生活の直接保障を

近藤さんは、東京・大田区で子ども食堂の活動を行ってきた。もともとは2008年頃から野菜の配達・販売を行っており、その活動の場で、週1回の「ワンコイン寺子屋」を実施していた。近藤さんはそこで子どもたちにおやつを提供しており、その経験が後の子ども食堂へとつながっていく。ワンコイン寺子屋の頃から、子どもたちがさまざまな相談を持ち込むこともあったという。子ども食堂は2012年にスタートし、あわせて子ども向けの料理教室などの活動も行ってきた。コロナ禍を経て、地域の中でのネットワークづくりが進んだ。活動を続ける中で、一つの団体だけですべての課題を解決することは難しく、「つながり」の重要性を強く感じるようになったという。近藤さんは、社会において「食」は「人」をつなぐ接着剤のような役割を果たすものだと考えている。子ども食堂にはさまざまな問題が持ち込まれるが、それらにどう対応すべきか悩んでいる子ども食堂は多いのではないか。その意味で、支援者同士の連携が不可欠だと感じている。SSWr(スクールソーシャルワーカー)などから紹介されるケースも増え、子どもだけでなく大人を支援する団体ともつながりながら、支援の幅が広がってきた。子どもや保護者を見守る機会を増やすことが大切であり、一つの団体に限らず、複数の団体が連携することで「見守る目」を増やしていくことが重要だと考えている。

●菅原耕太さん/一般社団法人 みんなのももやまこども食堂 スタッフ/沖縄

遊んで、食べて、ともに居ることを大切に一緒に生きていく
貧困対策としての居場所づくりではない、こどもたちの今を見つめる居場所づくり

菅原さんは、「貧困対策をやりすぎないこと」が大切だと語る。貧困対策は個人の努力に依拠しがちだが、「がんばりましょう」ではなく、「居場所で一緒に楽しみましょう」という姿勢が重要だという。2015年に「ももやま子ども食堂」が始まり、菅原さんは当初から関わってきた。2016年以降、沖縄では子どもの貧困対策が本格化し、その予算を活用しながら子ども食堂を運営している。「支援する」というよりも、遊びなどを通して「共にいる」ことを大切にしており、初めて来た子どもには「ここは自由だから、何をしてもいいんだよ」と伝えている。かつて教員から「なぜ毎日開かないのか。しんどい状況にある子どもがいるのに」と問われたことがあった。しかし、深刻な状況にある子どもについては、専門機関が対応すべき場合もあるだろうと考えている。貧困対策によって、その子の暮らしを一気に変えようとすることは、かえって乱暴なのではないかと感じることもあるという。居場所であることと、「支援・公助」の間で常に揺れ動いており、時には支援寄りに、時には居場所寄りになることがある。10年間活動を続ける中で、子どもたちは若者世代となり、若者支援や就労支援に関わることも増えた。その中で、つい「おせっかいスイッチ」が入ってしまうこともあるという。立ち上がった当初の思いとは裏腹に、いつの間にか公助の役割を背負わされているのではないかと感じることがある。その子がどう変わるかではなく、「社会がどう変わるか」が本来問われるべきだと語る。

●幸重忠孝さん/NPO法人 こどもソーシャルワークセンター 理事長/滋賀

子ども・若者の生きることに伴走する地域活動
いじめ・虐待・自殺・ヤングケアラーなど社会の最前線の課題と格闘

幸重さんは、活動の中で聞いてきた子どもたちの声をもとに、居場所づくりを行ってきた。SSWrがつなぎ役となり、居場所につながるケースも多い。10年間活動を続ける中で、支援する子どもの数は増加し、助成金も増え、専門職を雇用できるようになるなど、活動は強化されてきた。一方で、居場所につながった子どもたちのうち、支援が「終結」するケースはほとんどない。つまり、貧困状態から抜け出せる子どもはごく少ないという現実がある。大学無償化制度はあるものの、大学進学までつながるケースは限られている。児童福祉施設への入所や、事件、転居などをきっかけに支援が途切れることもある。貧困から脱することの難しさを強く感じている。他団体では、成功事例として当事者が語る場もあるが、そうした「晴れの場」に立てるのは成功した一部の人たちであり、厳しい現実から抜け出せないケースも多い。そのため、成功体験だけが語られることに違和感を覚えるという。これまでの子どもの貧困支援は、教育に重点が置かれ、学習支援が中心だった。教育支援は社会的な評価も高く、企業も支援に参加しやすい分野である。もちろん変化もある。公的助成金は増え、「貧困世帯の子どもはこの地域にはいない」といった言葉を聞くことは少なくなった。支援につながる子どもや若者も確実に増えている。しかし全体を振り返ると、どこか「もやもや」した10年間だった。そのもやもやの中で、バーンアウトしてしまった支援者も少なくないという。

■報告資料

●近藤 博子さん
https://end-childpoverty.jp/wp-content/uploads/2025/11/20251109kondo.pdf
●菅原耕太さん
https://end-childpoverty.jp/wp-content/uploads/2025/11/20251109sugawara.pdf
●幸重忠孝さん
https://end-childpoverty.jp/wp-content/uploads/2025/11/20251109yukishige_1.pdf
https://end-childpoverty.jp/wp-content/uploads/2025/11/20251109yukishige_2.pdf

※資料の一部を報告や論文などに引用する場合を除き、資料全文を許可なく引用、転載、複製、第三者への提供、改変などすることを禁止します。

■参加者アンケートより(抜粋)
・実際に前線で子どもの貧困対策に関わっている方から、その実態や官民との関係についての考えを聞くことができ、大変勉強になりました。
・こども食堂の現場からの意見はとても貴重で、メディアなどで紹介されるときと違って、より現実的というか、実際の苦労や課題も良くわかります。大変勉強になりました。
・報告と応答にうなずきながら聞き入っていました。最後は「対話」の必要性でまとまった感があります。そこで、再度疑問に思うのは、3人とも行政を含む何らかのネットワーク組織に属しているかと思います。その集まりの場では期待する「対話」ではなく「報告・連絡」になっているのではないか、本来ならそこが「対話」の場になる必要があるのではないかと考えました。もちろん、ネットワーク組織以外に無数の対話の場が必要だと私も思います。そこで、私は、子ども食堂や子どもの居場所に、定期的に、業務として行政職員が訪問することが少なくても必要ではないかと考えています。通常業務以外に対話する機会が難しいのであれば、業務として対話を入れてしまうしかないと。現場に行って「直接こどもに話を聴く」という業務が必要不可欠だと思います。
・いい意味で衝撃を受ける回でした。テーマからして、貧困に対してこのような立ち位置で解決に向けてアプローチしているハウツーのような会を想定していました。今回登壇した3名から、出会った子たちへの惜しみない愛情を感じる反面、大きな壁に直面しすぎた疲弊を強く感じ取りました。それがあまりにもリアルで、生々しく根深い問題で、深く考えさせられました。支援者、当事者、行政、教育機関、全て繋がっているようで、その間にはどこかステークホルダーとして機能しあうにはまだ拭えない、他人事のラインがあるのかなと。このようなお互いのリアルな声を聞ける機会ってどれくらいあるのか。話し合う場が欲しいという登壇者の方たちの願いがずっと心に残っています。
まだ何にも携われていない、関心を向けているだけの私にも深く印象に残る回でした。子どもの居場所になる場にいたい、という自分の夢は、今回しっかりと揺らぎ、私はどの立ち位置で子どもと関わりたいか、考え直そうと思う機会になりました。ありのままを話してくださった御三方に、大変感謝しています。

以上、ご報告いたします。

「なくそう!子どもの貧困」全国ネットワーク 世話人会

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