7月15日(日)第1回子どもの貧困セミナーを開催致しました
2012年7月15日(日)に2012年度子どもの貧困を考える連続セミナーの
第一回セミナーを開催致しましたので、ご報告致します。
2012年度 子どもの貧困を考える連続セミナー 第一回
「こどもの里の実践に学ぶ――「大阪市子どもの家事業」廃止案を問う」記録
1.日時 2012年7月15日(日)14時からから17時
2.場所 立教大学
3.講師 荘保共子さん ・大阪こどもの里館長
4.参加人数 約60人
<セミナー記録>
荘保さんは大学卒業後、釜ヶ崎の「土曜学校」(西成市民館で子どもたちの勉強をみる取組)で出会った子どもたちの目の輝きにびっくりして、釜ヶ崎の保育所で働くようになった。
1977(昭和52)年、荘保さんは釜ヶ崎で「子どもの広場」という事業を始めた。当時釜ヶ崎には、6000人ぐらいの子どもたちがいたが、子どもの遊び場が釜ヶ崎にはなかった。学童保育事業(留守家庭事業、小1から小3まで)であれば、補助金を得られるということで、学童保育という形で始めた。学童保育は、大阪で始まった事業であった。
1989(平成元)年、大阪市は「子どもの家事業」を独自に始めることになる。「子どもの家事業」は、留守家庭だけでなく、すべての子どもを対象とする事業であり、子どもたちや家族には費用が掛からないものであった。荘保さんが運営する「こどもの里」は、1996年に学童保育から「子どもの家事業」に移行した。
現在、「子どもの家事業」は、大阪市から人件費および物件費を補助されている。現在約350万円の人件費および約130万円の物件費(合計480万円)が補助されている。2012年現在、大阪市16区に28か所が設置され、運営されている。
橋下市長は、「子どもの家事業」を学童保育事業と統合し、留守家庭児童対策事業に一本化させたいとしている。学童保育事業は、運営費(人件費および物件費あわせて)として250万円ぐらいの補助でしかない。
また、学童保育事業は、月に利用料として保護者が、現在2万円の利用料(大阪市は周辺自治体と比べてかなり高い)を払わなければならない。
もちろん、運営にかかる経費が減らされることも問題だが、今回の橋下市長の案において、さらに問題なのは、子どもの権利であるとか、子どもの発達という視点が欠けていることである。
つまり、学童保育事業は、親が申し込まないといけないし、親が費用を負担しなければならない。ところが、釜ヶ崎という貧困地域の子どもたちの生活を見ていると、そうした条件に合わない子どもたちがかなり存在することが分かる。
ひとつには、「子どもの家事業」を利用している子どもの中には、家から少し距離を置く場所としてここを利用している子どもがいる。家庭の様子も分からない子どもも受け入れている。親の申し込みを待っているとそうした一番にしんどい子どもを助けることができない。橋下案では、結局そうした子どもを切り捨ててしまうことになる。
また、橋下市長は、親の責任を強調する。バウチャー制度などを使って、親がきちんと子育てするべきだという価値観が強い人物である。
ところが、釜ヶ崎の保護者たちの様子を見ていると、子どもにお金を回せる余裕がない親たちが多いことが分かる。また、子どもの養育が十分にできないのは、親自身の責任でもないことが分かる。例えば、覚せい剤に依存している母親の多くが、かつて性的虐待を受けていたなどの点も、これまで見えてきた。
橋下市長の政策の壁を崩すことは難しいと思っている。そこで、方針を変えることも考えている。現在、こどもの里を利用している99人の子どものうち40人が学童保育事業を利用できると考えている。そこで、残りの50-60人をどうするのかを新しく提案していこうと思っている。国の地域子育て拠点事業などを使うことでやれないかとも思っている。
■記録・まとめ=世話人会
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DVD『「ホームレス」と出会う子どもたち』(製作:ホームレス問題の授業づくり全国ネット)で、「こども夜周り」に参加する子どもたちが集う「こどもの里」。様々な困難を抱える子どもたち自身が、ホームレスの人たちに「おっちゃん、なんで外で寝なあかんの?」「お身体はどうですかぁ」…声をかけて回る姿を見ながら、その活動の中心にいる館長:荘保共子さんのことが気にかかっていました。「なくそう!子どもの貧困」全国ネットワークの設立集会にも、東京までかけつけてくださっています。今回のお話から、「子どもの家事業」と、そのひとつ「こどもの里」の全体像、何より釜ヶ崎という街で、その地域づくりの中心を担っている荘保さんのパワーに酔いしれる学習会となりました。広島、大阪、静岡、…全国各地からの参加が得られたことも記しておきます。ありがとうございました。
*参照:生田武志『おっちゃん、なんで外で寝なあかんの?こども夜回りと「ホームレス」の人たち』あかね書房/2012
■補足=セミナー担当世話人:綿貫