6月30日(月)パブリックコメント/子どもの貧困対策法「大綱案に盛り込むべき事項」意見提出のご報告

 「大綱案に盛り込むべき事項(意見の整理)」に対する意見

2014年6月30日
「なくそう! 子どもの貧困」全国ネットワーク世話人会
共同代表:平湯真人、湯澤直美、三輪ほう子
TEL:070-6576-3495/E-mail: mail@end-childpoverty.jp

 

「なくそう! 子どもの貧困」全国ネットワーク世話人会は、
内閣府の実施する「子どもの貧困対策に関する検討会」意見の整理「大綱案に盛り込むべき事項」に
対する意見募集について、以下の意見を提出致しましたので、ご報告致します。

 

私たちは、各施策に共通する大綱の在り方に関して意見を述べます。

 

意見その1.子どもの貧困の改善目標の設定

本法律は、「子どもの将来がその生まれ育った環境によって左右されることのないよう、貧困の状況にある子どもが健やかに育成される環境を整備するとともに、教育の機会均等を図る」ことを目的とするものであり、その立法の意義は誠に大きいものと思われます。
私たちは、この法律が子どもの貧困の解消に有効に機能するよう、以下のような具体的な数値目標を設定することを求めます。
(1) 2023年までに子どもの相対的貧困率を8%に半減させること。
(2) 2023年までにひとり親世帯の相対的貧困率を25%に半減させること。
(3) 2023年までに子どもの物質的剝奪率を4%に半減させること。
上記(1)と(2)の目標は、厚生労働省が2011年に発表した相対的貧困率の値をもとにしています。他方、日本では、年間所得をもとに算定される相対的貧困率では貧困の状況が的確に把握できないとの指摘があるものの、物質的剝奪の状況をとらえる指標も採用されていません。相対的貧困率と物質的剝奪状況の把握を併用することで、子どもの貧困状況を的確にとらえられるはずです。
ユニセフイノチェンティ研究所他著「先進国における子どもの幸福度――日本との比較 特別編集版」(公益財団法人 日本ユニセフ協会、2013年12月)では、「子どもの年齢と知識水準に適した本」「屋外レジャー用品(自転車やローラースケートなど)」「修学旅行や学校行事への参加費」など8品目のうち2つ以上が欠如している子どもの割合を「子どもの剝奪率」とし、国立社会保障・人口問題研究所「平成20年社会生活調査」のデータに基づいて日本の「子どもの剝奪率」を7.8%としています。当面の目標としてこれを半減させることを求めます。

意見その2.施策の検証可能性の確保

私たちは、政府に「子どもの貧困対策大綱」に記載する施策ごとに次の各事項を明記するよう求めます。
(1) 政策的に対処しようとする貧困事象について、抽象的・一般的な記述に留めるのではなく、具体的に明示すること。
(2) その貧困事象をいつまでにどのような状態になるよう改善するのかにつき、その目標像(改善目標)を明記すること。
(3) その改善のため、政府はいかなる施策を講じ、また地方公共団体にいかなる施策の実施を求めるのかを明記すること。
(4) 目標達成状況を検証し、政府の施策及びその実施状況を評価するための指標をあらかじめ明示すること。
施策を遂行し、指標をもとに各施策に対する評価・検証を踏まえて施策の改善と見直しに努めることを求めます。
また、子どもの貧困は多様な形態で広がっており、多角的な調査が求められますが、その実態把握に当たっては子どもの権利実現の立場から、正確な事実に基づくことを求めます。
たとえば、文部科学省が本年6月10日に公表した「平成26年度における就学援助実施状況調査」の結果(速報版)は、生活保護基準引き下げにともなって就学援助認定基準を引き下げ、かつ適切な措置をとらなかった市区町村は71自治体に留まったと報告しています。しかし、これは、平成25年認定基準を適用することを以って「影響が出ないように対応している」と分類した結果であり、切り下げの実態を過小評価し、子どもの貧困対策の劣化をおおいかくす可能性があると懸念されます。

意見その3.推進体制と検証について

国と地方公共団体における子どもの貧困対策の推進と検証の体制について、以下のことを求めます。
1 国における推進・検証体制
(1) 関係閣僚による「子どもの貧困対策会議」を定期的に開催すること。
(2) 有識者・当事者・支援団体等の関係者等から構成される「子どもの貧困対策審議会」を常設で設置すること。
(3) 内閣府に「子どもの貧困対策推進室」を設置し、組織的継続的な政策を推進すること。
(4) 子どもの貧困問題は領域横断的に対応を要することに鑑み、内閣府・文部科学省・厚生労働省をはじめとする「関係府省連絡会議」を機動的に開催し、適切に施策を推進すること。
(5) 内閣府・文部科学省・厚生労働省をはじめとする関係府省は、子ども・若者育成支援、社会的養護施策、ひとり親家庭支援、生活困窮者支援等、子どもの貧困対策に関連する分野とも緊密に連携し、有効な施策を講じること。
(6) 大綱に基づく施策の実施状況、目標の達成状況等を把握し、その効果等を評価するとともに、その結果を踏まえた見直しと改善に努めること。そのため、実態把握と効果測定を実施する仕組みを新たに設け、子どもの貧困対策を効果的に推進すること。
(7) 法律第7条「政府は毎年1回、子どもの貧困状況及び子どもの貧困対策の実施状況を公表しなければならない」とあるとおり、実態把握・政策効果の検証等のための「子どもの貧困白書」をWEB上で公表するほか、刊行物としても発行し、広く周知できるようにすること。
2 地方公共団体・地域における推進・検証体制
(1) 都道府県及び政令指定都市において、領域横断的な「子どもの貧困対策連絡協議会」等が組織され、子どもの貧困対策の計画づくり等が推進されるよう、国は積極的にはたらきかけるとともに、情報の提供などの支援を講じること。
(2) 都道府県のみならず市町村においても、子どもの貧困対策の担当部局等が設置されるよう、国は積極的にはたらきかけること。
(3) 地域の経済状況や少子化の実情等を踏まえ、地域の子どもの貧困の発現状況に的確に対応していくこと。
(4) 子どもの出生前(母親の妊娠期)から青少年期など社会への移行期まで、各年齢層に応じた切れ目のない支援を講じていくため、保育・教育機関、保健・医療機関、福祉機関、民間団体、企業、自治会をはじめ、地域の多様な関係者の連携・協力を確保しつつ、地域の特性に応じた実効性のある施策を推進していくこと。

意見その4.子どもの貧困問題についての学習・啓発・研修などについて

日本においては、子どもの貧困は家族の自己責任であるとの見方が根強く、いまだ子ども期に貧困にさらされる現状について、子ども・若者自身、および市民に広く理解されていません。また、子どもに関わる専門職においても十分周知されていない状況です。そのため、以下のような取り組みが必要です。
(1) 子どもの権利実現のために、子ども・若者自身が、子どもの貧困問題について学習する機会を保障すること。
(2) 国・地方自治体、企業等において啓発活動を推進すること。子どもの貧困に関する講演会や研修会の開催について、目標をもち開催状況を把握すること。
(3) 保育士等保育関係者、教師をはじめとする教職員、社会福祉士、精神保健福祉士、医師・看護師・保健師等医療関係者の養成課程において、子どもの貧困に関する教育を位置づけること。
(4) 保育士等保育関係者、教師をはじめとする教職員、社会福祉士、精神保健福祉士、医師・看護師・保健師等医療関係者ほか、子どもに関わる専門職や、自治体職員、民生委員・児童委員を対象とした研修を推進すること。

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