【開催報告】2022年2月26日(土)第19回子どもの貧困対策情報交換会

2022年2月26日(土)14時00分~16時00分、第19回子どもの貧困対策情報交換会
「いま危機にある日本の児童手当制度-子どもを真の受益者にするには」を開催しました。
(主催:「なくそう!子どもの貧困」全国ネットワーク/助成:公益財団法人 キリン福祉財団)

コロナ禍の中「子育て世帯臨時特別給付金」等が不十分ながら実施されましたが、離婚前別居や基準日を過ぎてからの別居・離婚といった事情にあるひとり親世帯が対象外となるなど、様々な問題も生じました。一方で、児童手当制度については昨春の国会で所得制限を強化する「改正」が行われただけでなく、今回の給付金をめぐる混乱や「こども家庭庁」創設をテコに、この現金給付の制度をさらに改悪・変質させようとする動きがあります。

今回の情報交換会では日本の児童手当制度の研究者である北明美さん(福井県立大学名誉教授)にこれらの問題について、また子どもの福祉とジェンダー平等の観点からお話しを伺い、みなさんとご一緒に学び合う機会として企画されました。

北さんの報告では、まず、日本の児童手当制度の現状についてご説明いただいた後、2022年10月から始まる所得制限の強化や、世帯合算方式の話を踏まえて、所得制限の目的がどこにあるのか?所得制限が必要な世帯に支援を強化するためではなく、政府・財務省の裁量で所得限度額が決定され、その結果後付けで支給対象世帯が決められているという、非民主的な制度となっている点について指摘がありました。

また、諸外国との制度比較や、児童手当制度の「こども保険」化(社会保険化)構想について、子育て世帯10万円臨時給付でのDV避難者・別居母子世帯への支給漏れについての話を通し、
・所得制限や社会保険化による社会の分断
・児童手当の受給権は誰にあるべきか
・市場や親の経済状況に左右されない権利を子どもに保障するべき
という、日本の課題についてのお話がありました。

休憩をはさんで、参加者からの質問と応答がなされました。新型コロナウイルス感染拡大によりオンラインでの開催でしたが、全国から約170名の参加がありました。

北明美さんとご参加の皆様に改めて感謝申し上げます。

■報告資料

〇北明美さん/福井県立大学名誉教授

https://end-childpoverty.jp/wp-content/uploads/2022/03/20220226kita.pdf

(PDFファイル:3MB)

■参加者アンケートより
・児童手当について知らないこと、知らされていないことだらけでした。本日お話聞かせていただけて良かったです。初歩的な質問にも丁寧にお答えいただき北先生には感謝しております。

・児童手当の役割とは、というスライドが、とても良かった。社会的な分断を生まないためにも、良い話でした。ありがとうございました。

・児童手当に対する、政府と財界の視点と本来持っておくべき視点を整理することができ、良い機会をいただけたと思います。

・こども保険構想など、自分の知らないことを知ることができた。また具体的な事例を挙げて説明していただいのでとても理解できた。目に見える「事実」だけでなく、「国の思惑」なども合わせて伺うことができたことはたいへん勉強になった。

・正直なところ、広報を拝見したときには児童手当の何がそんなに問題なのかよくわからないと思ったのですが、(消えた夫のもとに振り込まれ続けるという問題はよく聞きますが…)子ども保険構想のような、言われてみればいかにもありそうな話なども初めて知り、たいへん勉強になりました。もっとも考えさせられたのは、所得制限の有無が、誰が損をするとか得をするとかいう議論を超えて、社会像の選択と結びついているという点でした。所得階層間の対立や分断を進めることなく、子育ての負担を親だけではなく社会も担うことへの合意形成のあり方を探ることは、児童手当の問題に限らず非常に重要だと思いました。

・途中からの参加になってしまいましたが、北先生の論文などぜひ読ませていただきたいと思いました。水平的再分配、垂直的再分配、再分配のパラドクスなど自分の中で消化し、議会議論でも発信していきたいです。分断ではなく連帯へ、社会を再構築していかなければと強く感じました。

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