【開催報告】2023年12月9日(土)第23回子どもの貧困対策情報交換会を開催いたしました

 2023年12月9日(土)午後、第23回子どもの貧困対策情報交換会
「こども大綱を受けてー子どもの貧困対策のいまとこれから」を会場およびオンラインで開催いたしました。

(主催:「なくそう!子どもの貧困」全国ネットワーク/助成:公益財団法人 キリン福祉財団)

 当日、会場(東京・エッサム神田)には東京・埼玉・神奈川・栃木から11名の方に、またオンラインでは全国から60名の方にご参加いただきました。今回も、小学校・大学教員、SSW、自治体職員、地方議員、NPO・NGOスタッフ、学生、社会人、社団法人・財団法人関係者、特別支援学校職員、児童相談所職員、主任児童委員、メディア関係者、研究者など、様々なお立場の方にご参加をいただきました。ご参加いただいた皆様にあらためましてお礼申し上げます。

 今回は、今年4月のこども基本法の施行とこども家庭庁の発足のもと、こども大綱の策定に向けた動きが進む中、市民の声をこども大綱に反映させるために市民団体が行ってきた取り組みとあわせて、現在の子ども・若者支援の現場の声をご報告いただき、子どもの貧困対策のいまとこれからについて考えることをテーマに開催されました。

 講師には、公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの田代光恵さん、特定非営利活動法人こどもソーシャルワークセンター理事長の幸重忠孝さんのお二人をお迎えしました。

 まず、「なくそう!子どもの貧困」全国ネットワーク世話人の山野から、「なくそう!子どもの貧困」全国ネットワークでとりまとめた「こども大綱策定に向けた子どもの貧困対策に関する要望(第2次)」の内容について、ポイントとなる点(子どもの権利侵害であること、子どもの声を聴くこと、保護者等の労働問題、大綱で政策が後退しないこと等)について説明をいたしました。

 公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの田代光恵さんからは、「こども大綱策定に向けた市民社会の声」というテーマでお話いただきました。セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの子どもの貧困解決に向けた直接支援の取り組みと、その取り組みの中で当事者の方から届けられた声についてのお話の後に、「子どもの貧困はすべての子どもの権利の否定であり、子どもの権利に根差した子どもの貧困対策の推進が不可欠である」という視点から、国内の子どもの権利に関わる法制度について、こども基本法の理念・こども家庭庁およびこども大綱の策定プロセスについてご説明いただきました。また、こども大綱の中間整理案に対して、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンと「なくそう!子どもの貧困」全国ネットワークで取りまとめた共同意見書に全国85団体もの賛同があったこと、賛同コメントの紹介がありました。その後、実際に共同意見書等の意見(バブリックコメント)を受けて、どういった内容がこども大綱の整理案に反映されたのか、こども家庭庁が公開しているフィードバック資料についてご説明いただきました。最後に、今後の具体的な施策を定める「こどもまんなか実行計画」について、市民社会からの継続的な働きかけが重要であるというご提言をいただきました。

 特定非営利活動法人こどもソーシャルワークセンター理事長の幸重忠孝さんからは、「声を届けにくい子どもや若者たちのことを忘れないで-子ども・若者支援の現場の声-」というテーマで、どうしても届きにくい子ども達の声があるということをお話いただきました。こどもソーシャルワークセンターでの最近の支援の現場についてご報告をいただき、取材VTR等を用いて、センターの活動内容についてご紹介いただきました。10年間活動していく中で、国の制度がようやくセンターの活動に追いついてきており、居場所事業に補助が出るようになったが、貧困課題が濃い子どもたちは居場所提供だけでは親世代から続く貧困の連鎖から抜け出ることは出来ず、
支援対象が子どもの成長にあわせて若者に広がっているというお話がありました。幸重さんからは、「こども家庭庁がこども若者の声を聞き、こどもが参画できる取組が行われたのは歓迎するが、VTRの中に出てくる子ども達が、自ら意見を発することができるかというと、やはり難しい。例えば、自らが貧困家庭であるという意識がない子、基礎学力がついておらず文字での表現が苦手な子、発達の課題により言葉での表現が難しい子、人前で話す経験がない子や、安心できる環境でやっと話のできる子など、こうした声を発しづらいこども達がますます忘れさられてしまう実感がある」という問題提起をいただきました。

お忙しい中ご登壇いただきました田代さん、幸重さんに、あらためましてお礼申し上げます。

■報告資料
〇田代 光恵さん
こども大綱を受けて子どもの貧困対策のいまとこれから「こども大綱策定に向けた市民社会の声」
https://end-childpoverty.jp/wp-content/uploads/2023/12/20231209tashiro.pdf

〇幸重 忠孝さん
声を届けにくい子どもや若者たちのことを忘れないで-子ども・若者支援の現場の声
https://end-childpoverty.jp/wp-content/uploads/2023/12/20231209yukishige.pdf

特定非営利活動法人こどもソーシャルワークセンター
https://cswc2016.jp/

「京都新聞連載コラム こどもたちの風景 湖国の居場所から」
https://note.com/yukkyi1010/n/n6714a888cd22

「読売新聞連載 キミのきもちは 家庭の事情やすらげない」
https://www.yomiuri.co.jp/local/kansai/news/20231101-OYO1T50069/

■参加者アンケートより

・こども大綱についてどんな策定があり、取り組みがあるのかを知れてよかった。
・こども大綱の概要とその課題を知ることができました。
・子どもたちや、支援している方の生の声が聞けた。知らないこと、想像していなかった方が多く、視野を広げてくれた。
・すべてのこども、若者が安心して成長し、経験を重ねられるためには、こどもの権利条約がさまざまな場面でいかされることが必要です。教育の場、家庭への啓発が必要だと思います。
・幸重さんのお話に深く揺り動かされました。心理的安全性を担保された居場所の意義、そこでなら本音が出せる。様々なエピソードを聞かせていただきました。携わる職員の処遇のこと、地域格差、課題をいっぱい浮き彫りにしてくださった本日の会でした。ありがとうございます。
・幸重さんが、声をあげられない(言わない)子どもたちがいる、と報告されていて共感しました。どうやって声にならない思いを掬い上げるのか課題だと思います。

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