【開催報告】2024年11月17日(日)第25回子どもの貧困対策情報交換会を開催いたしました
第25回子どもの貧困対策情報交換会が、11月17日に開催されました。「なんでこんなになっちゃったの?子ども支援者としての教師の働き方を考える」というタイトルで、世話人でもある中嶋哲彦さん(愛知工業大学教授)にご講演をいただき、学校現場から、公立中学校員の金竜太郎(きむよんてらん)さんにご報告をいただきました。
(主催:「なくそう!子どもの貧困」全国ネットワーク/助成:公益財団法人 キリン福祉財団)
オンライン参加は、約60名、会場参加は、約20名(世話人なども含む)でした。会場参加は、教育関係者、福祉関係者が多かったように思いますが、来年度から教師として働く予定の方もいらっしゃいました。
まず、中嶋さんからのお話の概要は以下のようでした(資料を参照)。今回のタイトルは、中嶋さんの思いを込めたものでしたが、かつては、魅力的な仕事と見られていた教師が今は、そうではなくなっています。さまざまな困難を抱える子どもを含め、すべての子どもを支援する教師の労働条件等が厳しいものになっているからです。労働時間は、過労死ラインである月に超勤が80時間を超える教師が、中学校では36.6%(小学校でも14.2%)も存在し、さらに仕事を持ち帰る場合も多いことが文部科学省の調査からも分かっています。その表れとして、教員不足も深刻です。
中嶋さんは、こうした長時間勤務の原因のひとつは、勤務制度自体にあると指摘しています。公立学校の教員には、4%の教職調整額が支給される一方で、超過勤務手当は支給されてきませんでした。これによって、超過勤務を抑制するという仕組みが働かず、教員の多忙化が進んだとします。
文部科学省や財務省は、教員の定数を増やすのではなく、教員の業務の整理や効率性を目指すとしています。一方、中嶋さんは、生徒と向き合う時間や授業準備など大切な業務は減らすべきではない。さらに、週48時間勤務の時代からまったく変わってない教員定数を増加させない限り、解決には至らないだろうとします。ボブ・ディランの「風に吹かれて」の歌詞が示すように、「答えはそこにある」(「風に吹かれて」歌詞では「答えは風の中」)のであり、政府も分かっているはずなのに踏み出そうとしないのだとします。
学校現場で働く金竜太郎さんからのご報告では、不登校生徒の増加、生徒間の学力格差の拡大、コロナ禍を経てコミュニケーションが難しい生徒の増加など、教員の業務量はますます増加していることが話されました。
また、ICTの導入によって政府は効率化できるとしますが、(ICTが教育に効果を生む部分はありながら)、例えばビデオ教材などを作成する手間などが増えかえって忙しくなった点が指摘されました。
お二人のお話を受け、会場を中心に質疑等も活発に交わされました。
■報告資料
〇中嶋哲彦さん
https://end-childpoverty.jp/wp-content/uploads/2024/11/20241117nakajima.pdf
〇金竜太郎さん
https://end-childpoverty.jp/wp-content/uploads/2024/11/20241117kim.pdf
■参加者アンケートより
・友人に小学校や高校の教員をしている人も数名いて、教員の立たされている環境や仕事内容についても聞くことが多くあります。本当に難しい環境の中で、日々全力で子どもたちに向き合う友人の姿を見ていて、尊敬すると共にオーバーワークなのに給料が見合っていないということをとても感じていました。お金が全てではないのは確かですが、まずは当たり前になければならない待遇、優遇がないことが問題だと思います。その点において中々聞くことができなかったので、本日のお話の中でお金の話も聞くことができて良かったです。
・現在教育学部に通っている学生です。本日の話は自分にとって非常に有意義な話だったと思います。
・教員の働き方の状況を詳細に、そして教員に心と時間のゆとりがあってこそ子どもたちとちゃんと向き合えること、等大切なことを丁寧に説明していただいて多くの人に理解してもらえたと思いました。最後に、学生さんの質問「何ができるか」という問いにお二人の応えに、心揺さぶられました。今〇〇(※都市名)では、30~40代の教職員が多く、お二人のように思いを伝えられる人がどれだけ、いるのだろう、と思いました。管理職は当てにならないし、私は、組合で多くのことを学ぶことができたので、組合こそそれができる場であると思っていますが、その組合に入る人は、減るばかりと、つらいです。
・有意義なお話しをありがとうございます。お時間を要することかと存じますが、各都道府県の小・中・高等学校の現場の教員や学校にかかわる方々に今回の情報交換会の情報が事前に伝わるとありがたいです。